法を問い学を修める  vol.47 布施行のすすめ

布施行のすすめ

報道によると、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)世界最大手、米フェイスブック創始者のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)(31)は、自身と妻が持っている同社の株式のほぼ全てを、慈善事業に寄付すると発表しました。
 寄付するのは二人が保有する株式の99%分で、時価総額は450億ドル(約5.5兆円)に上るといわれます。

 産まれたばかりの娘に宛てた手紙の中で「全ての親と同じように、私たちはあなたに、より良い世界で育ってほしい。私たちの社会には、これから世界にやって来る人たちの生活をより良いものにするために投資を行う責任がある」と説明しました。
 寄付する金額にも驚きましたが、なにより私たちの社会や未来の人々の生活をより良いものにするためにという「人の可能性の追求と平等促進」のための寄付とのことです。

 金剛禅も、生きている人間が少林寺拳法の修行を通じて、「まず己を拠り所として自己を確立し、そして他者のために役立つ人間になろう」という、自己確立から自他共楽への実践へと高めていく事を修行の目的としています。

 釈尊は成道後に61人の修行僧の集まりが成立した時に、「比丘たちよ。いざ遊行(伝道)せよ、多くの人たちの利益と幸福のために。世間を憐れみ、人々の利益と幸福と安楽のために」と伝道の旗印を高く掲げて法を説いていく決意を述べています。
 多くの人々の幸せを願って布教伝道に当たられた釈尊は当然ながら他者との共存、ないし「社会への貢献の重要性」も説かれています。

 「もろもろの修行者よ。包容の態度とは、これらの四つである。それらの四つとは何であるか。布施と、愛語と、利行と、同事である。」(雑阿含経二六)と、四摂法とか四摂事<社会的実践の重要性>を説かれています。
 四摂法とは私たちが社会生活をする中で行うことができる四つの修行とされています。
 「布施」は他者に分かち与えることです。与えるものは「もの」でも「こころ」でもよいとされています。
 「愛語」は親しみにある優しい言葉をかけることです。
 「利行」は人のために尽くすことです。他者のために努力することです。
 「同事」は心を一つにして他者と協力することです。
 人々を惹きつけて救うための四つの徳であり、私たち金剛禅門信徒も「四摂法」を実践することで「自他共楽」の理想境へとつながります。
 そのためには、布施の中でも人間関係を円滑にする「無財の七施」を行うことで自分の心も清浄になり相手にもやすらぎを与えられます。
 眼施(がんせ) 優しいまなざしで人に接しましょう。
 顔施(げんせ) 和やかな微笑みのある顔で相手に接しましょう。
 言施(ごんせ) 真心のこもった言葉で接しましょう。
 身施(しんせ) 人にために進んで行動しましょう。
 心施(しんせ) 慈悲の心、思いやりの心、いたわりの心で接しましょう。
 床座施(しょうざせ)気持ちよく席や場所を譲りましょう。
 房舎施(ぼうじゃせ)来客に対して温かい気持ちで迎えてあげたり、困っている人を助けましょう。
 このような身近な奉仕によって、自己を高めることができるとともに、世の中の人々の心を和ませることができます。
 またこの中の一つでも真心をこめて実行できれば、自ずと他の事も良くなっていくと思います。
 そうすれば、周りの人たちと仲良くでき、自らの心は安らぎ、ともに幸せな日々が送れるに違いありません。
(2016年8月16日 文/飯塚 久雄)

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